先日、『65,000本以上のデータから、クラッチタイムのフリースロー成功率を調べてみた』という記事を読んで、それではクラッチタイムのシュート(フィールドゴールシュート)の成功率はどうなんだろうと疑問に思って調べてみた。
「クラッチタイムに強い選手」とはどういう選手か?
「クラッチタイムに強い選手」を考える上で、「クラッチタイム」と「クラッチタイムに強い」の定義を考える必要がある。
「クラッチタイム」は上述の記事の中で定義されてるものを引用する。
- 4Qの残り5分以降(延長戦までもつれれば延長戦も含む) かつ
- 得点差が5点差以内
また「クラッチタイムに強い」の定義は普段のフィールドゴール成功率(FGP)に比べてクラッチタイムのFGPはどれほど高いか(低いか)を考えるのが良さそうである。
そこで「クラッチタイムに強い」は以下のように定義することにする。
細かいデータや集計条件について
データはBリーグの試合結果のPlay by Playを利用した。
またデータの集計条件を以下のように定めた。今回はシュート成功率で見るので出場試合数やシュート試投数が少ない選手を除いた。
- 集計データは2020-21シーズンの3/21までのデータに限る
- そのうち36試合(消化試合数の80%)以上に出場、かつFG試投数が72本(試合平均2本以上)以上の選手
- さらにクラッチタイムのFG試投数が10本以上の選手
クラッチタイムのシュート成功率が高い選手・低い選手
結果は以下のようになった。
クラッチタイムのシュート成功率が高い選手
クラッチタイムのFG成功率/FG成功率 | ||
---|---|---|
Player | Team | |
大崎 裕太 | 信州 | 1.68 |
長野 誠史 | 三河 | 1.60 |
安藤 周人 | 名古屋D | 1.56 |
藤井 祐眞 | 川崎 | 1.50 |
晴山 ケビン | 滋賀 | 1.49 |
宇都 直輝 | 富山 | 1.45 |
パトリック・アウダ | 横浜 | 1.35 |
古川 孝敏 | 秋田 | 1.34 |
ジョナサン・オクテウス | 滋賀 | 1.32 |
篠山 竜青 | 川崎 | 1.25 |
多嶋 朝飛 | 北海道 | 1.23 |
アンソニー・マクヘンリー | 信州 | 1.22 |
並里 成 | 琉球 | 1.21 |
ジョシュア・スミス | 富山 | 1.21 |
松井 啓十郎 | 京都 | 1.21 |
ジェフ・エアーズ | 名古屋D | 1.21 |
ウェイン・マーシャル | 信州 | 1.21 |
ジャワッド・ウィリアムズ | 北海道 | 1.20 |
ダバンテ・ガードナー | 三河 | 1.20 |
山下 泰弘 | 島根 | 1.19 |
詳細なデータは以下(画像)
個人的に川崎を応援しているので、上位に藤井祐眞が入ってくるのは納得感がある。2/28の横浜戦でのブザービーターは記憶に新しい。
宇都直輝・古川孝敏・篠山竜青・並里成・松井啓十郎などの勝負強そうなベテランも上位にランクインしているのは興味深い。
ゴール下で押し込む形が多いのもあるだろうが、ジョシュア・スミスのFGPが85%近くになっているのは驚くべきスタッツ。
クラッチタイムのシュート成功率が低い選手
クラッチタイムのFG成功率/FG成功率 | ||
---|---|---|
Player | Team | |
田中 成也 | 広島 | 0.78 |
シェーン・ウィティングトン | 三河 | 0.77 |
寺園 脩斗 | 三遠 | 0.74 |
アレックス・デイビス | 秋田 | 0.74 |
ザック・バランスキー | A東京 | 0.71 |
アキ・チェンバース | 横浜 | 0.71 |
トーマス・ケネディ | 広島 | 0.69 |
前田 悟 | 富山 | 0.68 |
北川 弘 | 島根 | 0.66 |
安藤 誓哉 | A東京 | 0.63 |
パブロ・アギラール | 川崎 | 0.60 |
ベンドラメ 礼生 | SR渋谷 | 0.60 |
シャノン・ショーター | 千葉 | 0.56 |
狩俣 昌也 | 滋賀 | 0.55 |
遠藤 祐亮 | 宇都宮 | 0.53 |
ジョシュ・ハレルソン | 大阪 | 0.52 |
林 翔太郎 | 新潟 | 0.51 |
大浦 颯太 | 秋田 | 0.50 |
セバスチャン・サイズ | 千葉 | 0.37 |
朝山 正悟 | 広島 | 0.16 |
詳細なデータは以下(画像)
ここでのクラッチタイムのシュート成功率が高い・低いはあくまで上記の集計方法によることを留意したい。
実際、普段のFGPが高い選手ほど比率を伸ばしづらいこともあるだろうし、そういった選手の方が厳しいディフェンスを受けることや特別な対策をされるケースもあるに違いない。また、時間がない中でパスが回ってきて打たざるを得ないケースもあるかもしれない。あるいは、試投数も全試合を通した本数に比べて格段に少ないので数値がブレやすいこともあるだろう。
繰り返しになるが、あくまで上記の集計方法によるクラッチタイムでのシュート成功率の上昇・下落率を表しているだけである。
まとめ
クラッチタイムのシュート成功率の上昇率について詳しく見てみた。ここでまとめたものはあくまで数値でしかないので どういった形でシュートを打っているのか、シュートで終わるのではなく上手にファールを引き出しているのかなど もう少し細かく見る必要がある。
とはいえ、1点を争うヒリヒリした一連の攻防こそバスケの醍醐味の一つなので、ぜひ試合を観戦してみてほしい。
[追記]
Bleague Stats Analysis というサイトでBリーグの試合結果・チームスタッツ・個人スタッツなど色々まとめています。バスケ関連の記事もまとめています。よかったらご覧ください。
[追記2]
下記のツイートで指摘されたように、クラッチタイムのショット成功率が低い=「弱い」という表現は適切ではなかったので そのままシュート成功率が高い・低いという表現に修正しました。Yan さん、ご指摘ありがとうございます。
データを使っていろいろ考えるのは楽しい。クラッチタイムのショット成功率が低い=「弱い」っていう表現は残念だけど。「弱い」ならクラッチタイムで撃つ機会さえ与えられないだろうに。 https://t.co/LQnun8RMXC
— Yan (@Yansanpop) March 29, 2021