- 「クラッチタイムに強い選手」とはどういう選手か?
- 細かいデータや集計条件について
- クラッチタイムのTS%が高い選手・低い選手
- クラッチタイムのフィールドゴール試投数・フリースロー試投数が多い選手
- クラッチタイムにおけるチーム内でのシュート試投数・得点割合
- 終わりに
先日『Bリーグでクラッチタイムに強い選手は誰か?』という記事を書いたが、2Pと3Pを一緒くたにしたフィールドゴールパーセント(FGP)のリフトを見て「クラッチタイムに強い」・「クラッチタイムに弱い」を定義していた。
しかし下記のように、これには課題が浮かんできたので「Bリーグでクラッチタイムに強い選手は誰か?」Part2を書く。
ファールを引き出すプレイを考慮できてないし、2点と3点を区別してないしなのが微妙だ。eFG%で見るべきだったかもしれない。 https://t.co/RtAzFdQuKM
— tishikawa (@takaishikawa42) March 29, 2021
クラッチタイムのデータは助かります🧐📝
— 朴 航生 (@kazunariboku) March 30, 2021
成功率はもちろん大事ですが、チームの中でその時間帯にショットを任せている、ボールを持たせている選手が誰かが数値で見えてくる事が非常に有益です🙏 https://t.co/1X8H5Y2Bea
「クラッチタイムに強い選手」とはどういう選手か?
前回の記事と同様に「クラッチタイム」の定義は以下。
- 4Qの残り5分以降(延長戦までもつれれば延長戦も含む) かつ
- 得点差が5点差以内
「クラッチタイムに強い」を前回はFGPを見て判断していたが、今回はこれをTS%に置き換えて考える。
そこで「クラッチタイムに強い」は以下のように定義することにする。
- 平均TS%に対するクラッチタイムのTS%の比率(TSP_clucth / TSP)
TS%とは True Shooting Percentage の略で、2Pフィールドゴール・3Pシュートフィールドゴールに加えてフリースローも考慮したシュート効率を表した指標のこと。
一般的に以下の計算式で表される。
TS% = (PTS) / (2 * (FGA + 0.44 * FTA)) * 100
ここで注意したいのが FTA の係数の 0.44 という数値。これはあくまで慣例的なもので その数値の根拠が現代のBリーグにも当てはまるかは疑問が残るところだが、ここでは一旦議論せず慣例的な計算式を利用する。
詳しい議論やBリーグ版のTS%の求め方については、こちらのブログを参照すると良さそう。
また、今回は成功率だけでなく、チームの中でクラッチタイムにショットを任されている選手を見たいので 試投数も集計する。
細かいデータや集計条件について
データはBリーグの試合結果のPlay by Playを利用した。
またデータの集計条件を以下のように定めた。今回はシュート成功率で見るので出場試合数やシュート試投数が少ない選手を除いた。
- 集計データは2020-21シーズンの3/21までのデータに限る
- そのうち36試合(消化試合数の80%)以上に出場、かつFG試投数が72本(試合平均2本以上)以上の選手
- さらにクラッチタイムのFG試投数が10本以上の選手
クラッチタイムのTS%が高い選手・低い選手
結果は以下のようになった。
クラッチタイムのTS%が高い選手
TSP_lift | ||
---|---|---|
Player | NameShort | |
晴山 ケビン | 滋賀 | 1.52 |
大崎 裕太 | 信州 | 1.50 |
篠山 竜青 | 川崎 | 1.47 |
安藤 周人 | 名古屋D | 1.44 |
ジョナサン・オクテウス | 滋賀 | 1.41 |
藤井 祐眞 | 川崎 | 1.37 |
長野 誠史 | 三河 | 1.34 |
多嶋 朝飛 | 北海道 | 1.34 |
古川 孝敏 | 秋田 | 1.31 |
ジェフ・エアーズ | 名古屋D | 1.29 |
ジャワッド・ウィリアムズ | 北海道 | 1.28 |
五十嵐 圭 | 新潟 | 1.25 |
金丸 晃輔 | 三河 | 1.25 |
宇都 直輝 | 富山 | 1.25 |
パトリック・アウダ | 横浜 | 1.24 |
並里 成 | 琉球 | 1.24 |
レオ・ライオンズ | 名古屋D | 1.23 |
ロスコ・アレン | 新潟 | 1.22 |
納見 悠仁 | 新潟 | 1.21 |
西山 達哉 | 信州 | 1.21 |
詳細なデータは以下(画像)
前回に比べて、3P・フリースローが加味されているので、フリースローが苦手な選手の順位が落ち、逆に3Pが得意な選手の順位が伸びているように見える。
五十嵐や金丸が前回は上位20名には入っていなかったが、今回のランキングには入ってきた。
クラッチタイムのTS%が低い選手
TSP_lift | ||
---|---|---|
Player | NameShort | |
アイラ・ブラウン | 大阪 | 0.83 |
前田 悟 | 富山 | 0.83 |
齋藤 拓実 | 名古屋D | 0.82 |
シャノン・ショーター | 千葉 | 0.80 |
パブロ・アギラール | 川崎 | 0.79 |
ライアン・ロシター | 宇都宮 | 0.77 |
アキ・チェンバース | 横浜 | 0.77 |
ベンドラメ 礼生 | SR渋谷 | 0.77 |
狩俣 昌也 | 滋賀 | 0.74 |
ザック・バランスキー | A東京 | 0.74 |
安藤 誓哉 | A東京 | 0.72 |
トーマス・ケネディ | 広島 | 0.72 |
アレックス・デイビス | 秋田 | 0.70 |
岡田 侑大 | 富山 | 0.67 |
大浦 颯太 | 秋田 | 0.65 |
林 翔太郎 | 新潟 | 0.56 |
遠藤 祐亮 | 宇都宮 | 0.50 |
セバスチャン・サイズ | 千葉 | 0.49 |
朝山 正悟 | 広島 | 0.47 |
ジョシュ・ハレルソン | 大阪 | 0.44 |
詳細なデータは以下(画像)
クラッチタイムのフィールドゴール試投数・フリースロー試投数が多い選手
チームの中でクラッチタイムにショットを任されている選手は、成功率にかかわらず注目に値するので試投数に着目してランクを付けてみる。
クラッチタイムのフィールドゴール試投数が多い選手
TSP_lift | TSP_clutch | TSP | FGA_clutch | ||
---|---|---|---|---|---|
Player | NameShort | ||||
ニック・メイヨ | 北海道 | 1.13 | 69.645441 | 61.743516 | 50 |
レイヴォンテ・ライス | 京都 | 1.08 | 63.338301 | 58.741156 | 44 |
ジョーダン・ハミルトン | 滋賀 | 1.10 | 61.022121 | 55.275407 | 41 |
ジョーダン・テイラー | 北海道 | 1.06 | 55.038103 | 51.732906 | 38 |
古川 孝敏 | 秋田 | 1.31 | 69.311663 | 52.787162 | 37 |
デイヴィッド・サイモン | 京都 | 0.97 | 53.990610 | 55.422237 | 36 |
ベンドラメ 礼生 | SR渋谷 | 0.77 | 37.217659 | 48.320341 | 35 |
ダバンテ・ガードナー | 三河 | 1.19 | 76.863951 | 64.355452 | 34 |
富樫 勇樹 | 千葉 | 0.91 | 49.634274 | 54.262877 | 33 |
ニック・ファジーカス | 川崎 | 0.92 | 58.106576 | 63.416509 | 30 |
安藤 誓哉 | A東京 | 0.72 | 38.296569 | 52.874313 | 30 |
トーマス・ケネディ | 広島 | 0.72 | 40.419162 | 55.995585 | 29 |
ディージェイ・ニュービル | 大阪 | 1.11 | 76.479438 | 68.833717 | 28 |
パトリック・アウダ | 横浜 | 1.24 | 76.149425 | 61.352289 | 26 |
齋藤 拓実 | 名古屋D | 0.82 | 50.066756 | 60.830794 | 26 |
森川 正明 | 横浜 | 1.01 | 58.459422 | 57.730924 | 26 |
橋本 拓哉 | 大阪 | 0.94 | 56.980057 | 60.413104 | 25 |
アレックス・デイビス | 秋田 | 0.70 | 41.139241 | 58.468664 | 25 |
チャールズ・ジャクソン | SR渋谷 | 1.08 | 72.089227 | 66.967535 | 24 |
シャノン・ショーター | 千葉 | 0.80 | 43.741588 | 54.372349 | 24 |
フィールドゴール試投数になると さすがに各チームのエースが名を連ねている。
中でも、インサイドプレーヤーよりも、ドリブルの1on1で自らシュートチャンスを作れる選手の方がやや多い印象がある。
クラッチタイムのフリースロー試投数が多い選手
TSP_lift | TSP_clutch | TSP | FTA_clutch | ||
---|---|---|---|---|---|
Player | NameShort | ||||
ダバンテ・ガードナー | 三河 | 1.19 | 76.863951 | 64.355452 | 41 |
チャールズ・ジャクソン | SR渋谷 | 1.08 | 72.089227 | 66.967535 | 29 |
ディージェイ・ニュービル | 大阪 | 1.11 | 76.479438 | 68.833717 | 27 |
ジョーダン・ハミルトン | 滋賀 | 1.10 | 61.022121 | 55.275407 | 26 |
ステヴァン・イェロヴァツ | 三遠 | 1.12 | 64.915459 | 57.882374 | 23 |
レイヴォンテ・ライス | 京都 | 1.08 | 63.338301 | 58.741156 | 22 |
ジュリアン・マブンガ | 富山 | 1.02 | 59.970015 | 58.913309 | 22 |
川嶋 勇人 | 三遠 | 1.01 | 51.345609 | 50.871397 | 21 |
レオ・ライオンズ | 名古屋D | 1.23 | 74.190647 | 60.120024 | 21 |
ジョーダン・テイラー | 北海道 | 1.06 | 55.038103 | 51.732906 | 21 |
パトリック・アウダ | 横浜 | 1.24 | 76.149425 | 61.352289 | 20 |
ロスコ・アレン | 新潟 | 1.22 | 69.786535 | 57.099055 | 19 |
ジェフ・エアーズ | 名古屋D | 1.29 | 80.645161 | 62.412602 | 15 |
デイヴィッド・サイモン | 京都 | 0.97 | 53.990610 | 55.422237 | 15 |
アレックス・デイビス | 秋田 | 0.70 | 41.139241 | 58.468664 | 15 |
多嶋 朝飛 | 北海道 | 1.34 | 69.915254 | 52.234175 | 15 |
ウェイン・マーシャル | 信州 | 1.20 | 75.561313 | 63.170580 | 14 |
グレゴリー・エチェニケ | 広島 | 0.92 | 60.920578 | 66.138033 | 14 |
アンガス・ブラント | 滋賀 | 1.01 | 60.920578 | 60.363348 | 14 |
シャノン・ショーター | 千葉 | 0.80 | 43.741588 | 54.372349 | 13 |
フリースロー試投数が多いのはさすがの3年連続得点王のダバンテ・ガードナー。
インサイドで圧倒的な支配力・得点力を兼ね備えたスコアラーの実力が数値に表れている。
渋谷のインサイドを支える屋台骨的存在のチャールズ・ジャクソンも2位につけ、目立っている。
続くのがニュービル・ハミルトン・ライス・マブンガと各チームの得点もアシストもできるオールラウンダープレイヤーたち。
技術力が高く、終盤でのファールを引き出す力はまさにチームの大黒柱たちらしい。
クラッチタイムにおけるチーム内でのシュート試投数・得点割合
最後に単純に試投数の多さではなく、各選手がチーム内でどれだけの割合を占めているかを見る。
チームごとにクラッチタイムの時間帯が異なる場合に、単純な合計値だとクラッチタイムの時間帯が長いチームに属する選手がランクの上に来やすくなる影響を除くため。
クラッチタイムにおけるチーム内でのシュート試投数・得点割合
TSP_lift | TSP_clutch | TSP | FGA_clutch_rate | FGA_clutch | FGA_clutch_team | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Player | NameShort | ||||||
ベンドラメ 礼生 | SR渋谷 | 0.77 | 37.217659 | 48.320341 | 48.61 | 35 | 72 |
ダバンテ・ガードナー | 三河 | 1.19 | 76.863951 | 64.355452 | 43.59 | 34 | 78 |
富樫 勇樹 | 千葉 | 0.91 | 49.634274 | 54.262877 | 41.77 | 33 | 79 |
ジョーダン・ハミルトン | 滋賀 | 1.10 | 61.022121 | 55.275407 | 41.41 | 41 | 99 |
トーマス・ケネディ | 広島 | 0.72 | 40.419162 | 55.995585 | 40.85 | 29 | 71 |
齋藤 拓実 | 名古屋D | 0.82 | 50.066756 | 60.830794 | 40.62 | 26 | 64 |
安藤 誓哉 | A東京 | 0.72 | 38.296569 | 52.874313 | 39.47 | 30 | 76 |
レイヴォンテ・ライス | 京都 | 1.08 | 63.338301 | 58.741156 | 37.93 | 44 | 116 |
古川 孝敏 | 秋田 | 1.31 | 69.311663 | 52.787162 | 37.37 | 37 | 99 |
ジャック・クーリー | 琉球 | 1.02 | 66.585956 | 64.983356 | 37.14 | 13 | 35 |
ニック・メイヨ | 北海道 | 1.13 | 69.645441 | 61.743516 | 36.23 | 50 | 138 |
ステヴァン・イェロヴァツ | 三遠 | 1.12 | 64.915459 | 57.882374 | 34.33 | 23 | 67 |
並里 成 | 琉球 | 1.24 | 58.060109 | 46.640723 | 34.29 | 12 | 35 |
ディージェイ・ニュービル | 大阪 | 1.11 | 76.479438 | 68.833717 | 34.15 | 28 | 82 |
チャールズ・ジャクソン | SR渋谷 | 1.08 | 72.089227 | 66.967535 | 33.33 | 24 | 72 |
デモン・ブルックス | 島根 | 0.92 | 53.462322 | 57.875936 | 32.69 | 17 | 52 |
ロスコ・アレン | 新潟 | 1.22 | 69.786535 | 57.099055 | 32.00 | 16 | 50 |
デイヴィッド・サイモン | 京都 | 0.97 | 53.990610 | 55.422237 | 31.03 | 36 | 116 |
ライアン・ロシター | 宇都宮 | 0.77 | 41.534810 | 53.884415 | 30.77 | 20 | 65 |
橋本 拓哉 | 大阪 | 0.94 | 56.980057 | 60.413104 | 30.49 | 25 | 82 |
割合になると渋谷のベンドラメが1位になる。クラッチタイムにベンドラメがアタックしている渋谷の試合はよく見る気がしていたが、実際にそのようである。同じことは千葉の富樫でも言えそう。
上位の選手はチームの信頼度が高い証拠のように思える。
クラッチタイムにおけるチーム内での得点割合
TSP_lift | TSP_clutch | TSP | PTS_clutch_rate | PTS_clutch | PTS_clutch_team | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Player | NameShort | ||||||
チャールズ・ジャクソン | SR渋谷 | 1.08 | 72.089227 | 66.967535 | 55.79 | 53 | 95 |
ダバンテ・ガードナー | 三河 | 1.19 | 76.863951 | 64.355452 | 54.79 | 80 | 146 |
ディージェイ・ニュービル | 大阪 | 1.11 | 76.479438 | 68.833717 | 51.69 | 61 | 118 |
古川 孝敏 | 秋田 | 1.31 | 69.311663 | 52.787162 | 47.15 | 58 | 123 |
ロスコ・アレン | 新潟 | 1.22 | 69.786535 | 57.099055 | 45.95 | 34 | 74 |
パトリック・アウダ | 横浜 | 1.24 | 76.149425 | 61.352289 | 42.74 | 53 | 124 |
ステヴァン・イェロヴァツ | 三遠 | 1.12 | 64.915459 | 57.882374 | 42.16 | 43 | 102 |
レイヴォンテ・ライス | 京都 | 1.08 | 63.338301 | 58.741156 | 41.72 | 68 | 163 |
ジョーダン・ハミルトン | 滋賀 | 1.10 | 61.022121 | 55.275407 | 41.03 | 64 | 156 |
富樫 勇樹 | 千葉 | 0.91 | 49.634274 | 54.262877 | 40.00 | 38 | 95 |
グレゴリー・エチェニケ | 広島 | 0.92 | 60.920578 | 66.138033 | 37.50 | 27 | 72 |
トーマス・ケネディ | 広島 | 0.72 | 40.419162 | 55.995585 | 37.50 | 27 | 72 |
ニック・メイヨ | 北海道 | 1.13 | 69.645441 | 61.743516 | 37.38 | 77 | 206 |
ジャック・クーリー | 琉球 | 1.02 | 66.585956 | 64.983356 | 37.29 | 22 | 59 |
ドウェイン・エバンス | 琉球 | 1.18 | 73.964497 | 62.924924 | 33.90 | 20 | 59 |
安藤 誓哉 | A東京 | 0.72 | 38.296569 | 52.874313 | 33.78 | 25 | 74 |
田中 大貴 | A東京 | 0.94 | 50.484653 | 53.675101 | 33.78 | 25 | 74 |
デモン・ブルックス | 島根 | 0.92 | 53.462322 | 57.875936 | 33.33 | 21 | 63 |
リード・トラビス | 島根 | 0.97 | 54.460581 | 55.899784 | 33.33 | 21 | 63 |
ベンドラメ 礼生 | SR渋谷 | 0.77 | 37.217659 | 48.320341 | 30.53 | 29 | 95 |
終わりに
前回の記事をアップしてから それなりの反響・コメントを頂いた中で見直すべき点が多くあった。
そのため今回の記事のように別視点から似た内容を書く機会が得られた。
確かにデータで見るだけでは至らない点も多いとはいえ、バスケットボールをデータで見ることの楽しみがあるのもまた事実。
この楽しみがバスケ好きのみならず広がっていくと嬉しい。最後にrintaromasudaさんのツイートの引用で締めくくります。良いスレッドでした。
NBAが数々のAdvanced Statsを記録し、サイトで誰でもそれが見られるようにIT投資をしているのは、それがNBAの『エコシステム』を強固にするから。その投資によってデータで語るNBAアナリストが生まれる。データ系のコンテンツが生まれる。巡ってNBAファンの数も質も増す。それがエコシステム。(続
— 増田林太郎 Rintaro Masuda (@rintaromasuda) March 31, 2021
[追記]
Bleague Stats Analysis というサイトでBリーグの試合結果・チームスタッツ・個人スタッツなど色々まとめています。バスケ関連の記事もまとめています。よかったらご覧ください。